しつけ
小さな頃の我が家は、しつけとしてもっぱら根性棒が愛用されていた。
何か悪いことをすると、頭かお尻か、手の甲かを叩かれた為、
根性棒がイヤでイヤで、
たびたび家族の目を盗み根性棒をどうにか隠してやろうと試みるも、
成功したことは一度もなく、
新しい根性棒をいくつか見た後、その制度はなくなった。
その次は『やーちゅー』だった。
溶けたロウソクを太ももに垂らされる。
白いロウソクだ。
廊下の突き当たりにナゼかかけられている、ナポレオンっぽい人の絵の下で熱いロウをポタポタ垂らされた。
おしおきは『部屋に閉じ込められる』バージョンも多かった。
鍵は内側にのみあるタイプだったのに、どういう原理か、どうしてもドアノブが下がらない。
閉じ込められるたびに不思議で、
大人になってフト原理を知った時には、なるほどそういう事かと妙に嬉しくなった。
今でもドアノブを見るとついチェックしてしまうのは、過去のそういった経験があるからかもしれない。
前にも言ったが、ウソはよくつくが、
隠す事が苦手でヒドく動揺してしまうのが特徴だった私は、
ついに警察に連れて行かれることになる。
祖母のサイフからお金を盗んだのだ。
ばれそうになったとたん、母と祖母のすぐ側で、
取ったお金をタンスと壁の隙間に隠し、あっけなく見つかり、悲しそうな祖母の目に見送られつつ、警察に連れて行かれた。
『お嬢ちゃん、この裏には牢屋があるんだよ。
この次悪いことしたら閉じ込めるからね。』
恐怖に身体をこわばらせた私は、二度とサイフからお金を取らないと誓い、まちの至る所に見かける『牢屋』を見るたび息を止めた。
『あの中に牢屋がある。』これもやはり、大人になって『牢屋、』ではなく、『交番』だったとしる。
まぁ私もたいがい懲りないヤツだったみたいだ。
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